八十八夜の別れ霜

 夏も近づく八十八夜。狙いすましたように冷え込みました。「八十八夜の別れ霜」とは良く言ったもので、寒い春だった今年はぎりぎりまで居座った誰かさんが別れを惜しんでいるのかもしれません。

 というわけで、二十四節気のお話です。

 先日のエントリで『萃香が月を砕いたのは如月の十七日ではないか云々』と書きましたら、無限旋律のとしさんから『砕月については香霖堂に節分の日という記述がありますよ』という丁寧なメールを頂きました*1。

 で、確認してみたら書いてあるわけです。

 彼女が語り出したのは、とても奇怪な話だった。先日、彼女――十六夜咲夜が働く紅魔館で節分が行われたという。吸血鬼が鬼を追い払うという変わった行事だが、紅魔館はそのような不思議な行事を頻繁に行っているらしく、あまり珍しくもない。

「――その節分大会が終わろうとした頃、月に異変が起きたのよ。貴方は知らないだろうけど」

 後日、『文々。新聞』で知ったのだが、節分の日の夜に月が割れるという惨事が起きていたらしい。月は音もなく割れ、音もなく元通りになったとのことだったが、時間が時間ということもあって気が付いたものは少なかった。

月と河童『東方香霖堂』より

 web版は引用が楽だ。

 文花帖(本の方)には「○月○日」としか書いてなかったので、節分のその日ではないのだろうと思ったのですが、どうも違うようでした。あの考察は、幻想郷が旧暦を使っている可能性も考えて、旧暦を新暦に変換し、対応する月齢と照合した結果のことだったのですが。

 旧暦にしろ新暦にしろ、新月ならともかく満月が月初めにあるってことは相当稀なケースなのです。まぁ有り得ないとは言いませんが(としさんによれば、2007年の節分は満月らしいです)。

 ひょっとすると幻想郷には、月に関して秘められた何かがあるのかもしれませんね。

 さらに、気付いたことがもう一つ。

 幻想郷ではおそらく旧暦と書いてしまったのですが、明治の改暦が行われたのは明治六年。明治十七年の隔離説が本当だったとしても、改暦に従っている可能性は否定できないわけです。

 はっきりと「幻想郷は旧暦です」とは言い難いようです。もしくは、人間は新暦で、妖怪は旧暦なのかも。でもまぁ妖怪は暦なんて気にしないだろうから、天狗だけの都合かもしれませんけどね。

 というわけで、萃香が月を砕いた日は幻想郷の節分の日らしい。しかしそれが外の世界の暦のいつにあたるかは、さだかではない、と。曖昧な部分はあえてそのままにし、その余地であれこれ想像して楽しむのが乙なのかもしれません。