輝くもの天より墜ち

単調なSFが突然ミステリに急変し、SFという舞台装置の威力をいかんなく発揮して、最後まで疾走させられた。五百ページを越える本を一日で読んだのは、とてもとても久しぶり。
最初、登場人物が多くて把握できなかったのだが、読んでいく内にすいすいと入ってきて誰が誰かちゃんとわかるようになっていくところはさすが。
ネタバレになるので書かないが、この最後、あの描写は、二十代、三十代のヒヨッコ作家には到底書けない。作者がインタビューで、私というたまねぎの皮を剥いて、全部向いたと思ったらま残っていたから書いた、というようなことを語っているとおり、波乱の人生を歩んだティプトリー・ジュニアなればこその一作だと思う。