実験体四十六號

くどいほど書いているが、自分は藤木義勝氏の大ファンである。91年の『地獄の番犬〜ケルベロス』の頃の藤木氏も好きならば、いま現在も好きである。そんなところに、この自主制作映画DVD発売の報が流れてきた。買わない手は無い。

実験体四十六號 [DVD]

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なにしろ藤木氏が主演である。あとPVが非常に魅力的だった。
同氏が日記で書いている通りまさしく「ドンパチ物をこよなく愛する輩が夜な夜な横浜の片隅に集まって、弾着の血糊と火薬まみれになって創りあげた作品」であり、昭和初期の圧迫されたほの暗い空気とその中に潜むかすかなモダンさ、そういう雰囲気が見事に融合していた。
銃撃戦がメインなのは言うまでもないが、個人的にはそうした合間にあるわずかな日常の情景が素晴らしい。
黒衣の二人が小雨の中、幸子に案内されて彼女の家へ行くところと、その後のすき焼きのシーンは見どころの一つであると思う。
また、端役も光っている。特に少佐と軍曹のやり取りは最高である。

少佐「短機関銃を貸せ!」
軍曹「お断りします!」
 コッキング音。
軍曹「順序は守って頂かないと」

感想は上記に書いた通り、銃撃戦については言うこと無し。見栄えや格好良さなどではなく、それがたとえ娯楽であっても殺戮描写以外のなにものでもないことを示している。
銃撃戦を理屈や個人の事情など関係なく、赤裸々に描くことで、銃というものが凶器であり暴力装置であることをなによりも雄弁に語っている。
そこに価値がある。
なぜか? それは見栄えによる格好良さや小理屈を並べて、銃器の本質をぼやかすことなく、見る者に伝えるからだ。
もちろん、ハリウッド映画のような見栄え重視の描き方もありだし、それはそれで娯楽作品として価値がある。
だからこそ、こういう作品がなくてはいけない。そしてこれが娯楽作品ではないか、格好良くないのかと言われれば否である。短い尺の中にきっちりと収まっていて無理がない。ノスタルジック、センチメンタル、バイオレンス……全部が入っている。

刮目して見よ!