「めそさんは 直球を 狙ったと 言っていたけど これは超絶 変化球です」
本人がここを読むことを予想して、先に書いておきますと、私が途中で退屈するようなものが、いわゆるスタンダードなエロゲーです。直球です。
というより、ギャルゲー/エロゲー的な意味での直球、定型というものがあんまり好きではないのです。特に序盤で笑いを取るのに、典型的なボケとツッコミをやられると、大抵の場合は笑えません。特にツッコミが関西出身のキャラでもないのに「なんでやねん」だったら、あっという間に冷めます。
ちょっとした冗談とか、駄洒落とか、ブラック・ジョークとか、言葉遊びとか、揚げ足の取り合いとか、延々とボケまくる(ボケにボケを被せる)なら、笑えます。
実際、前作の『メロウイヱロウ』では、イチカの言動に終始にやにやしていました。
わかりやすく言うと、このゲームの主人公は『ONE〜輝く季節へ』の折原浩平(主人公)のバカな部分にブラスαおバカしてできあがったようなシロモノです。
長森瑞佳(幼馴染み)が朝起こしに来るのを知っていて、あえてベッドの下に隠れるような行動を取る、というようなバカさ加減です。
それから、ヒロインのまふらに声を充てているのが七凪るとろさんなので、ああいうノリのキャラを任せたら、そのノリが加速するに決まっているじゃないですか! そういう意味では、ぴったりの配役でした。
Twitter上で「テキストが稚拙」といった主旨の感想があったのですが、一定以上の語彙と文章構成力のない人間にこのテキストは書けません。おバカな文章を書くには、まずもってまともな文章を書ける必要があるからです。
そもそも、主観視点となる主人公がおバカ(頭が悪いという意味ではありません)なので、一人称である限り地の文も当然おバカになります。それが自然です。これは、個人的に譲れない一線なので断言します。
ともあれ、そういう人間が「バカゲーがやりたくなったので、プレイしてみたら予想以上に素晴らしくバカゲー(超弩級の褒め言葉)で楽しい」とツイートするようなゲームは、直球ではありません。それ以前に、バカゲーという時点で変化球なのですが−。
繰り返しになりますが、主観が変われば、人称云々に拘わらず、文体を変えるのは私にとっては基本だと思っているからです。語彙に制限を掛けて文体を変えても、隠しきれない我というものが、私にも少なからずあるみたいですし。
しかし。
最後までプレイして思ったのは、シナリオの構成をちょっと変えるだけで、主人公のおバカさ加減はそのままでも、これはど直球の王道になり得ると思いました。
どうぼやかしても、ネタバレになるので書けません。
あとは、五七調縛りをゆるくすることでしょうか。わかっていてやっていると思いますが、ところどころあまりにも無理がある部分があるのです。結果として、特徴にはなっていますが、不自然さを助長している部分にもなってしまっていました。
こういう部分が気になってしまうひとは、やりにくいと思います。私も昔出した同人誌で、意図して変な表現を使ったら、そこを指摘してきた方がいましたし。感想を頂けるだけで、ありがたいのでそういう率直さはむしろ大歓迎なのですけども。
このゲームは、頭のネジを二、三本飛ばしたいくらいの気持ちでやると良いです。
ここのところ、お堅い資料を読んでくっそ真面目なテキストばかり書いているので、気分転換には丁度良かったです。
グラフィックも良かったですね。まふらの印象が“あれ”だけで、大きく変わるだけでなく、違和感を覚えなかったことには驚きました。あ、これが自然なのか、と納得させられてしまいました。
最後に一つ、注意点。プレイするとき、ヘッドホン。忘れないよう、気をつけて(七五調)。
おそまつ。