ブリット

 

ブリット (字幕版)

ブリット (字幕版)

 

 スティーブ・マックィーン主演、1968年のアメリカ映画。坂の多い街、サンフランシスコでの初代フォード・マスタングVSダッジ・チャージャーのカーチェイスが有名だろうか。マスタングを駆るマックィーン本人は「当時の自分が発揮できる最高のテクニックを出し切った」と言ったらしい。レーサー出身の俳優なので、この発言に疑問はないが、オンボードカメラが無い時代に、あのスタントをどうやって撮ったのだろう? そう思えるほど、不自然さがなかった。おそらく、カットの繋ぎやカメラアングルで何らかの魔法を用いているのだろう。

 カーチェイスは、映画中盤にあり、以降はマックィーンがわずかな手がかりから黒幕を突き止めるまで、ノンストップで邁進していく姿が描かれる。

 ラストシーンが非常に淡々としていて、「今日日の映画では通らないだろうなぁ」と思った。しかしながら、言葉はなく、クレジットさえも最低限に抑えた終わり方は実に渋い。特に、ブリット警部補(マックィーン)が寝室のドアを閉め、洗面台で顔を洗うシーンから『ブレード・ランナー』のラストを思い出した(もしかして、原型か?)。

 

 サンフランシスコは、『ナイトライダー』などにも良く出てくる街なので、雰囲気はそれなりに見慣れたアメリカの街並みなのだが、シスコに限らず60年代末期の古きものと新しきものが混じり合っている風景は、ちょっとしたカルチャーショックだった。

 50年代の車(いわゆる長寿車種ではない)と70年代に入ってから主流となる車が一緒に走っているし、病院の中は40年代と言われても信じてしまいそうな古びた部分が出てくる。アメリカ合衆国という国を象徴するかのような多彩な人種がそうした風景の中で動いているのに、70年代に爆発的に増加するニューシネマにあるようなイデオロギー的なものは感じられない。ありのままを映したらこうなる、という感じだったからこそびっくりしたのかもしれない。

 そうして気付かされるのは、現代に近づくにつれて変化が画一的になっているという事であり、いまもなお加速しているという事だ。

 マックィーンの魅力を知るために見たつもりが、彼を起点に映画の見方を新たに1つ教えられた気がした。