門田充宏『追憶の杜』東京創元社

 

追憶の杜 風牙 (創元日本SF叢書)

追憶の杜 風牙 (創元日本SF叢書)

 

  前作『風牙』の続編。個人の記憶を他人が追体験できる記録データとして汎用化──抽出・翻訳──する技術を生み出した企業九龍と、このきわめて特殊な業務に携わる記憶翻訳者《インタープリタ》。そして、汎用化された記憶データを巡る三つの中編を収録した一冊。

 『追憶の杜』の英題が"MEMENTO MORI"なのが、追憶=過去を思い返す行為の意味と本作の主題と絡んでいて考えさせされる。メメント・モリ、死を思え。

 

「六花の標 Never, never forget me not」

 珊瑚が担当した汎用化記憶データが、依頼者の手によって情報流《ストリーム》に公開された事を端に発する小さなスキャンダルが「記憶のデータ化の是非」へと繋がり、九龍の立場を揺るがすものになっていく。

 情報流は、大雑把に言えば使用者の嗜好に合わせた情報を個人端末に収集する機能を備えたインターネットであり、情報の共有もしやすい。そうした技術進化の背景で扱う人間の中身はあんまり変わっていない様は、どれほど技術が進化しても根本は変わらないと描いているかのように思えた。

 それが悪意でも善意でも。

 ぶっちゃけ、人間だろうがAIだろうがこの辺は全く同意見なのだけど、犬というファクターについ注視してしまって、うっかりミスリードしそうになった。これって、実は犬の記憶なんじゃないの? と(苦笑)。

 珊瑚がプロ意識と個人の感情の板挟み間でどうにか事態を収拾しようとして空回りしては、カマラ女史に加え新たな上司ダンディこと団藤にフォローされる姿は前作を読んでいると年相応に危なっかしくて微笑ましい。個人的に25歳くらいが一番暴走しやすいんだよねー、などと思いつつ読んでいた。

 専門家ならでは視点が鍵になるのが、この作品と珊瑚というキャラクターに柔らかさと硬質さを併せ持たせているのだと思った。

 

「銀糸の先 I do not know whether it was good to know」

 香月《かづき》というフリーライターが珊瑚にインタビューをする過程をインタビュアー側(つまり香月の一人称)から描いていくのだが、記憶翻訳者《インタープリタ》や情報流《ストリーム》、トランキライザなどの技術が当然のようにある以外は生活様式などは現代とほぼ変わらない世界観の物語のためあっちこっちにミスリードを誘う仕掛けがある中編。

 これは、上記の世界観を生かした仕掛けで、現代にはない技術がある現代として作品世界を捉えられる描き方をしているため使える技だと思う。そのため、このシリーズは生活感が掴みやすく生々しい。

 「六花の標」の項で(ひとの)根本は変わらない、と書いた通りこの世界に生きる人間についても、読者である我々と同じ現代人として捉えられるためあらゆる情動や行動が近しく感じられる。

 珊瑚に対して結構な感情移入をしている読者としては、ストレスを感じるアプローチなのだが、これは香月がインタビュアーとして承知でやっていることなので、これを珊瑚がどうあしらうかが前半の見どころ。

 半ばからは急転直下の展開ではあるものの「ああ、そう来たか」と予測通りのところに落ち着いた。ミステリに馴染み深い人は、下手すると前半のかなり早い段階で真相に気付いてしまうかもしれない。
 物語の描き方が最も現代的な一編でもあり、SFに馴染みのない人も取っつきやすいと思う。そういう意味でSFへの入り口としては、非常に優れている作品だと思う。

 

「追憶の杜 Everyone has, but nobady is aware」

 こう書いたらネタバレかなぁ……という気がするのだけど、『電脳コイル』が好きな人は読むべし(笑)。

 社長の不二が他界した後の九龍は、その不在の大きさを埋めるかのようにサポートAI(今回は珊瑚のパートナーであるハリネズミイメージの孫子)に疑験空間のデザインさせるという新たな取り組みをはじめていた。同時に珊瑚をはじめとする記憶翻訳者の負担を減らす様々な新技術の開発と実装も行われていて、潜行している珊瑚と外との通信がスムーズなので技術屋のショージや団藤の登場頻度が上がっている。

 記憶へのアクセスはともかく擬験空間(『風牙』収録作の「閉鎖回廊」など)でも珊瑚と孫子だけだと、どうしても内省的な進行になるため作品としても進化を取り入れたのだと思う。

 収録作の中ではぶっちぎりでこの中編が好き。

 憔悴している珊瑚の荒れた生活空間(てか自室)がまざまざと浮かび上がってくるし、長い付き合いで気の利くショージと付き合いは短いが面倒見が良い団藤それぞれの気遣いに温もりを感じる。さらに、カマラ女史はオフの日に「子供が会いたがっている(!)」という口実で買い物に連れ出す……なんて最高に魅力的なキャリアウーマンの意外なプロフィールが明らかになったり、ろくな服がないことを気にする珊瑚が可愛い。

 そして、風牙から託されたバトンが本当の意味で珊瑚の手に渡る話でもあり、『風牙』に続く犬SFでもある。犬より猫派なのだが、年々犬派からの影響が強く受けるようになっていて、この調子だと犬派に転びそうである。

 ネタバレになるので詳しくは書かないが、終盤の夕焼けの描写が素晴らしかった。光景が鮮明に思い浮かぶほど、読者の記憶にある「そういう光景」を見事に引っ張り出してくる。控えめに言っても最高。

 

 そして、表紙のデザインや帯の惹句はこの3つの中編を経て大きな意味を持ってくる。日本語の題名は同じなのに、英題が異なるのは、単一の作品としての『追憶の杜』と中編集としての『追憶の杜』の違いを表しているように思えた。

 前作『風牙』は表紙(より正確にはカバーデザイン)初見のインパクトが強かったが、『追憶の杜』はまじまじと見たとき、なにより読み終えて見返したときに存在感が強い。

 前より少しだけ背が伸びた珊瑚が樹(歳月を経た存在)の前に、頼りなげにでもちゃんと自分の脚で立っている姿はこのシリーズを象徴していると思う。

 

 ところで、読了時に感想をブログに書くぞと心に決めておきんがら、半年(いやもっとか?)くらい経ってしまいましたorz

 そして昨日、この本が出てからちょうど一年が経過しました。引っ張っちゃてごめんなさい、と思うと同時にずっとこなせずにいた課題をようやく終わらせることができた心地です。

 

shisiki.hatenablog.com

タミヤ 1/32 ミニ四駆PROトヨタ ガズー レーシング WRT/ヤリス WRC

 田宮模型の1/32 ミニ四駆PROシリーズ No.54トヨタ ガズー レーシング WRT/ヤリス WRC(MAシャーシ)を筆塗り部分塗装で作りました。

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 ミニ四駆の進化が目覚ましく、昨年フェスタジョーヌ・ブラックスペシャルを作った際に面食らったものでした。

 子供の頃に遊んでいたミニ四駆とはシャーシから駆動系に至るまで走行特性が根本的に異なっていたことも驚きでしたが、なにより実際に組んでいく中でボディをはじめとする外装の出来の良さに驚かされました。

 ヤリスWRCのキットは、ボディの白が成形色でリアウイングとボンネット上のインテークなどの一部を除いてシールが同梱されています。元々、無塗装コンペ第二弾として用意したキットだったのですが、これリアウイングが白いといまいち締まらないのですよね。そこで方針を転換して、部分塗装にすることにしました。 

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  使用した塗料はMr.カラーのセミグロスブラック(92)のみです。説明書の塗装指示ではリアウイングがブラック、インテークがセミグロスブラックだったのですが、実車の写真や動画を見ているとブラックでは艶がありすぎるように思えたため、セミグロスブラックで統一しました。
 タミヤカラーとMr.カラーでは同じ色でも発色が微妙に違うのですが、基本色に関しては気にするほどの差はありません。ブラックに関してならタミヤの方が光沢強めでしょうか。

 キットの紹介ページにあるヤリスWRCの解説リンクは2018年のものなのですが、キットが再現しているのは2019年バージョンです。そうして実車の情報を集めていくと、2020年の最新バージョンが付属シールを活かす上で最適に思えたため、2020年バージョンのカラーリングを参考に塗っています。

toyotagazooracing.com

 というわけで、アレンジバージョンです。

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 リアウイング、ボンネットのエアインテークカナード、バンパー両サイド、前輪上のダクトが塗装した部分です。

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 カナードのスポンサーシールの白が良い感じに浮き立ちました。

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 写真を撮ってアップしてからリアウイングのシールがちょっとめくれているのに気付いたので、いまは修正してあります。

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 リアウインドウのドライバー名が独立したシールだったら、勝田貴元選手の名前を入れたかったです。今回はチャンピオンの敬意を表して。

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 トップビュー。ボンネットのスポンサーロゴが傾いているような気がするのですが、これ「DENSO」が斜体なのと撮影時の角度の問題です。あんまりこだわりすぎると事故るのでこのままにしました。

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 リアウイングは質感を出すためにわざと筆むらを作って塗膜を厚めにしています。

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 このリアビューは好きなアングルです。
 シールを貼るのに結構苦戦しました。考えてみれば、デカールにせよシールにせよ大判のものを貼るのは久しぶりでした。曲面なので最初の固定位置の決め方とその角度が重要になってきます。

  

 今回は部分塗装なのでマスキングは最低限です。

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 最低限と言いつつフロントウインドウまで覆ってあるのは、塗装する際に持ちやすくするためと筆が滑った際の予防措置です。リアウイング基部からにょっきり生えているのは爪楊枝です。パーツ側に適当な棒(大抵はランナー)をマスキングテープで固定して、乾燥時に固定冶具で挟んだ方が楽な場合はこうしています。

 使用したマスキングテープは、クレオスのマスキングテープとタミヤの曲面用マスキングテープの二種類。バンパー部分にちょこっと見えている白いテープが曲面用マスキングテープです。商品名通り曲げて貼れるので、カーモデルなどの曲面マスキングには重宝するのですが、エアブラシもしくはスプレー塗装での使用を想定しているためか、筆塗りだと筆に染み込んだ薄め液と塗料が流れ込んでしまうことがあります。f:id:shisiki:20200419005402j:plain

 シールを貼る直前はこんな感じです。良い感じの黒になりました。
 予想通りマスキングテープを剥がした直後はあちこちに塗料の染み出しがあったので、薄め液を綿棒やキムワイプに染み込ませて拭き取りました。
 今回の場合は、塗装面の上にマスキングするわけではないので、この修正作業込みで希釈度を変えての重ね塗りを行っています。普段なら注意すべき筆むらも材質の違い(特にリアウイング)を表現するために逆に利用する方向で塗っているため、染み出しやすい塗り方でやっていることも関係ありますね。

 あらためて、シールを貼って完成したものがこちら。

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 以前作ったフェスタジョーヌ・ブラックスペシャルが見栄えにこだわりすぎた上に限定ボディを使ってしまったため、補修が難しくなり走らない四駆になったので、今回は走る四駆を目指しました。
 筆塗りなのでリタッチは簡単。WRCカーなんだから生傷上等! ってな勢いで作ったのですが、走らせる場所(コースがあるお店に行けない)が無いことに完成してから気付きましたorz

 

 ちなみに、以前作ったフェスタジョーヌ・ブラックスペシャルは、走らない仕様のくせに足回りが贅沢です。

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 ヤリスWRCが本格稼働した暁には、このスーパーハードタイヤは強化ホイールごと移植すると思います。

 この2台を並べてみるとこんな感じです。

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 ラリーカーとサーキットカーが並んでいる感じです。

 ガチで速さを求めて作るとしたら、多分ボディがもっと軽くて大径タイヤも使える車種の方がいいと思います。逆に模型として作ることも楽しみたいのなら、こうした実車ベース(架空車も含む)の車種が面白いと思いました。

  

HGBCプトレマイオスアームズ(#無塗装も楽しい)

 HGBCプトレマイオスアームズをおいさまさん主催のプラモデル無塗装完成コンペ「#無塗装も楽しい」参加作品として作りました。

市販の一般的なプラモデルであれば、なんでもOK。
【無塗装】で完成させる。
塗料やマーカー・ピグメント等塗料系以外の接着剤、パテ類、シールやデカール類は自由に使用可能。
完成写真は一枚は必ず元BOXと一緒に撮影したものを使用する。

  レギュレーション上、パテ使用はOKなので肉抜き穴埋めだけして製作が止まっているキットを使おうと思ったのですが、折角なのでこの企画のためのキットを買ってきました。

 そうして完成したキットがこちらになります。

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 元々はHGBDセラヴィーガンダムシェヘラザードの武装パーツ(の単品販売)なのですが、独立した〝こういう形の艦船〟という解釈で作ってみました。シルエットを強調するため艦首にシールは貼っていませんが、ランナーの構成上艦首パーツが余るので、一度分解すればシールを貼った艦首パーツに付け替えることも可能です。

 『機動戦士ガンダム00』の母艦プトレマイオスを模した武装ユニットという設定のため、スケールは1/144ですが艦尾は左右に分離する独自の構造となっています。

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 完全無塗装です。ヌッテナイヨ。
 最近、模型の撮影をiPhoneのカメラからうっかり死蔵していたデジカメに切り替えたのですが、写真がまだまだ下手くそです。
 デザイン上、元になったプトレマイオスと異なりコンテナの先端がほぼ艦首と同位置に来ます。

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 艦尾部もやはりプトレマイオスとは異なり、エンジンブロックが左右独立したユニットになっています。艦尾は艦首と比べると前後の長さがそこそこ確保されているため、この角度から見ると結構スリムなシルエットが出ます。

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 正面から見ると艦首の寸詰まり感はあまり感じませんが、このアングルから見た際に艦首のシールを貼ってあると──艦首上部が白いと──艦橋窓までの距離感が測れるので貼らなかったのです。段差が強調されるので、実寸より長く見えるわけです。ヌッテマンセンヨ。

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 逆に艦尾は真後ろから見ると中央ブロックの分割部までの奥行きがそれほど無いことがわかります。記事を書いていて気付いたのですが、右舷のコンテナが少し下がってますね。上部コンテナは少しだけ上下角を変えられます。

 表面処理(ゲート跡処理含む)は徹底してやっていますが、パーツの合わせ目消しは一切やっていません。作っているときは中央ブロックの分割線が気になるかと思っていたのですが、実際に組んでみるとデザインとして十分有り得るラインだったのでそのままにしてあります。全塗装するときも同じで、有り得るラインと解釈できる場合はあえて消さないことにしています。これは、元のデザインであるイラストと立体物である模型との解釈の違いですね。スケールモデルなど実物が存在する場合はまた別の話ですが、架空のメカだからこそ選べる選択肢だと思っています。

 近いサイズの模型と比較するとこんな感じです。

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 OVA青の6号』DVD-BOX付録の6号りゅうおうと並べてみました。りゅうおうの方は塗装済み模型ですが、こうした既製品と並べても中々見られる出来だと思いません?
 キットの素性の良さが表れていますね。
 プトレマイオスアームズ(プトレマイオス)は海老川兼武さんのデザインなのですが、海老川さんは『青の6号』にも参加しています。

 OVA青の6号』のメカデザ担当割はDVD-BOX付属冊子によると、

前田真宏さん:6号りゅうおう、ノボ、ムスカ
河森正治さん:1号コーバック、グランパス
山下いくとさん:7号ウーメラ、8号シャン、ブルードーム原案
きお誠児さん:3号マラコット、9号シンハー
海老川兼武さん:0号、自衛隊関連(通常動力潜水艦なるしお等)
村田蓮爾さん:グランパス・パワードスーツ部
草彅琢仁さん:ナガトワンダー原案 

  となっています。グランパスについては前田さんがインタビューで「デザイナーが異なるものをワンパッケージにするのは、普通はやってはいけないことですから、河森さんも悩まれたと思います」とコメントされています。

 最終決戦に参加したメカ(6号りゅうおう、8号シャン、3号マラコット、グランパス、0号 VS ナガトワンダー、ムスカ)は、全デザイナー総集合だったわけですね。

  話が逸れましたが、〝こういう形の艦船〟という解釈で作るため、艦橋窓を強調したいところです。買った時点ではこの部分が出っ張っていると思っていたのですが、幸いなことにツライチ(面一:面と面に段差がないという意味)だったのでシールの余白を適当なサイズに切って貼りました。

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 こんな感じですね。
 工程としては、青いパーツのスリットより少し幅広にシールを切って、切ったシールを貼る面にあてがって長さの見当を付け、ちょん切って貼る、これだけです。使っているカッターナイフは、タミヤの模型用カッターナイフです(替え刃はオルファ)。
 注意点としては、貼る前に表面をキムワイプなどでよく拭いておくことと、ピンセットを使って貼ることでしょうか。別に指で貼っても良いのですが、シールの糊の面に指脂が付くと剥がれやすくなります。固定の際もピンセットの平面を使ってならしていくとしっかり貼り付きます。

 

今回使用した工具と工作について

 工具の名前をあれこれ出してしまったので、今回使用した工具を並べてみました。 

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 下に敷いてあるウェーブのカッターマットも含みます。スポイトは水を使用する際に使います。

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 ニッパーが二種類あるのは、ランナーの切り出しには使い古しのタミヤの精密ニッパー(刃こぼれしている)を使い、ゲートの切断にはゴッドハンドとコトブキヤのコラボ商品コトブキニッパーを使うためです。
 最近のガンプラ(特にHG)は、ニッパーのアクセスエリア(工具を入れる空間)が狭いため、この様に対処しています。

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 大抵はコトブキニッパーで事足りるのですが、どうしても切り残しができてしまう場合があるので、その際はデザインナイフで削ります。金属ヤスリはデザインナイフだとパーツ本体まで削ってしまいそうな場合に使用します。右端にあるのが模型製作で普段使いしているピンセットです。全部タミヤですが、特にコダワリがあるわけではありません。

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  今回から本格導入したゴッドハンドの神ヤス!(スポンジヤスリ)アソートです。これまで金属ヤスリでは行えない研磨には、タミヤのフィニッシュイングペーパー(紙ヤスリ)を使っていたのですが、模型界隈で評判の良い神ヤス!を導入してみました。
 金属ヤスリを結構使うのと、フィニッシュイングペーパーのストックが十分にあるため、使用頻度の高い600、800、1000番のアソートからはじめて見ました。水研ぎにも対応していますが、空研ぎでのみ使っています。水研ぎするときは、フィニッシュイングペーパーを使っています。てか、神ヤス!最高です。これはもう手放せません。
 神ヤス!1000番で研磨したらもう最終仕上げに入れる状態だったので、この先はコンパウンドに切り替えました。

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 Mr.ホビー(GSIクレオス)のコンパウンド細目(3000番)と極細(8000番)です。要するに液体ヤスリのようなものです。厳密には異なるのですが、私はそういう感覚で使っています。
 コンパウンドは付属の不織布に染み込ませて使います。神ヤス!1000番の切削面をコンパウンド細目でならし、水を染み込ませたキムワイプもしくは綿棒で掃除してからコンパウンド極細で同じように磨くと元のプラ素材とほぼ同じ光沢が得られます。
 やり過ぎるとテッカテカに光ってしまったり、削りすぎてパーツの形が変わってしまうのでちょこちょこ様子を見ながらやります。ぶっちゃけ、面倒なのですが、成果がすぐ現れるのでやり始めると楽しいです。

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 これが何度か書いている日本製紙クレシアキムワイプです。導入後、作業効率がかなり向上しました。紙のカスが出ずしかも薄さに対して破れにくいため乾燥面の拭き取りはもとより、吸水性が良いので水を染み込ませての掃除や塗装の際に筆などの器具を掃除するのにも使えます。

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 綿棒はダイソーで売っている綿棒と細い綿棒(赤ちゃん用綿棒となっている場合もあります)の二種類を使い分けています。爪楊枝はモールドなどにコンパウンドが入り込んでしまった際に使います。これらはダイソーで売っていた三分割されている綿棒ケースに綿棒、細い綿棒、爪楊枝を仕舞ってあります。
 ハサミはクローバーの裁縫用ハサミです。主にシールやデカール、今回の場合なら不織布を切る際に使います。
 水用のコップは法事の際にもらったお酒に付属していた蓋件盃です。

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 こちらもダイソーの商品。本来はタッパー掃除用のブラシなのですが、金属ヤスリの目の掃除に使っています。白い四角い物体はメラミンスポンジの30mmブロックで、神ヤス!の掃除に使います。ぶっちゃけ、メラミンスポンジで表面を擦ってもそれなりの効果はあります。 定規も100円ショップの商品ですが、目盛りの反対側にカッター用の金属プレートが入っているものを使っています。

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 縁の下の力持ち、ファンテックのツールキーパーと組み直しの際の必須アイテムウェーブのパーツオープナーです。
 このツールキーパーは近年発売された新商品で、製作中に工具を一箇所にまとめておけるので非常に便利です。ニッパーも刃の部分を奥のバーの下に合わせておくとしっかり立ちます。

  これらの工具は模型を作っているうちに増えていったものですが、長く使っているものは代替わりしていて、ニッパーはコトブキニッパーで四代目、デザインナイフは二代目(ただし刃は交換している)、金属ヤスリは二代目か三代目でそろそろ更新を考えている時期です。

 時折、模型を作るのにどの工具が必要なのかわからないといった疑問を見かけますが、ぶっちゃけニッパー以外は作っているうちに「こういう道具があったら良いのに」という壁にぶつかると思うので、それに応じて揃えていけば良いと思います。

 

 あとは、どんなものに仕上げたたいかというイメージですね。

 たとえば、今回の無塗装コンペではレギュレーション遵守と先に書いたコンセプトの他に佐藤明機さんの作品世界から受けた印象を混ぜ込んでいます。

 具体的にはこの様に(『ビブリオテーク・リヴ/楽園通信社綺談』より)。

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 中身のメカニズムというか妄想寄りのイメージは美加ちゃん先生(明貴美加さん)ですね、やっぱり。

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 ずばり『銀河お嬢様伝説ユナ』です。最近、どうやってもこのモチーフから受けた影響からは逃れられないと悟ったので、これをどう自分のやり方で表現するかという考え方をあらためました。
 とりあえず、なぞりやすい宇宙船から攻めてみました。

 なお、スタンドはこれを使っています。

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 この手のスタンドではコトブキヤのフライングベースシリーズが良いのですが、ちょっとしたものを固定する際にはこれで十分です。figmaを挟めるパーツもありますし、ベース自体が軽くても問題ない場合は事足ります。
 ガンプラの場合は各シリーズに対応するスタンドベースを使うと良い感じです。HGならあんまり気にしなくても良いのですが、MGや重量級キットの場合はベースの表面積は広くそれなりの重さがあるものを使わないとずっこける危険があるからです。

 

  さて、ここまで読んできて、こんな疑問を持った方がいると思います。

 「無塗装で作るのにそこまでやる必要があるんですか?」

 

 結論から言うとコンペに参加する上でも、塗らない前提だけで作る上でもコンパウンドまで持ち出してやる必要は無いです。 

 じゃあなんでやったんですか? マゾなんですか? マゾなんですね! コンパウンドのくだりで「面倒なのですが、成果がすぐ現れるのでやり始めると楽しいです」なんてもっともらしい事を書いているのも、本当は焦らされるのが好きなんでしょう?! 充電くんの刑みたいに! 充電くんの刑みたいに!(※)

 ……冗談はさておいて、過去に「完成させることを最優先に作ってみたらどうだろう」と思って試したことがあるのです。

 結果、完成した瞬間にジャンクパーツの塊ができました。愛着なんて1ナノもわかない。これはキットの素性がどうこうって問題じゃないです。目的が完成だけなので、コンセプトもイメージもあったものではなく、作っていても楽しくなかったからで、完全に私の性格気質によるものです。
  そもそも、今回の無塗装コンペは「無塗装〝も〟楽しい」なので、自分が楽しめるやり方を選択したら、表面処理の沼に入ってしまったわけです。楽しかったですけどね。後から手を加えることはなく「これで完成」と言い張れて、自分が納得できるものを作ることを目指したこともあります。

  面倒くさい性分を再確認しました。

 
※充電くんの刑:アニメ『フレームアームズ・ガール』の小ネタ。充電くんと呼ばれる充電ユニットと繋がったケーブルのコネクタをフレームアームズ・ガール側のコネクタに短い間隔で抜き差しする。たとえるなら、敏感な部分を突っつき回すような感じだろうか?

 

関連リンク

plamoyasan.com

bandai-hobby.net

www.tamiya.com

www.kotobukiya.co.jp

shop.godhandtool.com 

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pro.crecia.co.jp

www.daiso-sangyo.co.jp

 

べっぴんの町

 

べっぴんの町 [DVD]

べっぴんの町 [DVD]

  • 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
  • 発売日: 2015/11/11
  • メディア: DVD
 

  1989年公開。原作は軒上泊の同名の小説なのですが、こちらは1985年初版発行で、映画が公開された時点で同じ探偵“私”を主人公とした素人探偵《オプ》シリーズは、4巻目まで刊行されていました。原作も結構面白くて、いま2巻目の『ディセンバー13』を読了して、『また、ふたたびの冬』を読み始めたところです。ここまで読んできて、シリーズ4冊からのエッセンスを1本の映画に入れているのかな、と思える部分があります。

 映画『べっぴんの町』は、出演者の持ち味を活かす形でアレンジされているようで、原作『べっぴんの町』との相違点が結構多いのですが、それぞれ小説としての面白さ、映像としての面白さを追求した好例だと思いました。

 キャストが超豪華なんです。特にある嗜好を持つ人間にとっては、男優の面子が凄い。

 柴田恭兵、田村美佐子、本木雅弘和久井映見峰岸徹笑福亭鶴瓶倉田てつを片桐竜次、伊藤洋三郎、川治民夫、上田耕一

 89年ということは、『あぶない刑事』は『もっとあぶない刑事』かつ『もっともあぶない刑事』で、ゴジラは『ゴジラVSビオランテ』で、仮面ライダーは『仮面ライダーBLACK RX』なので、これだけで上記の約半数が出揃ってしまいます。

 そうした背景を受けてか、柴田恭兵が「こんな上品なデカがいるか?」と言ったり、倉田てつをが「俺にはやらなくちゃいけないことがあるんだ」と言ったり、原作にある台詞であっても明らかに狙ったメタ台詞が出てきて笑えます。特に後者は原作にはない台詞なので、脚本が意図的に入れたのでしょうね。

 セントラルアーツ制作ということもあって、共演経験のある役者同士の絡みが多いため、息がぴったり合っているところも見ていて心地良かったです。

 舞台は神戸。

 内陸育ちで海のある場所では日本海側にしか住んだことのない自分からすると、フィルムは古いのに絵は新鮮に映りました。

 また、地元の方によれば、阪神淡路大震災で失われた神戸の街並みを残す貴重なフィルムでもあるそうで、その他にも横須賀などとはまた違った日本の中に入り込んでいる異国の文化を感じ取れる作品になっているとも思います。
 別に隠していたわけではないのですが、恭サマ(柴田恭兵の愛称)のファンなので、DVDを買った理由はわりとそれだけです。事前に原作を読んでみてそれが面白かったから、というのもありますけどね。

 台詞回しがいちいちキザなのですが、このキャストが言うと嫌味が無いんですな。原作だと文章だけなので、ちょっと気になります。

 私は、九時きっかりに住処を出た。一階の中国人の洋服屋は、まだシャッターを降ろしていた。トアロードを下ってきたメルツェデスをうっちゃり、道路の西側へ渡った。少し坂を下り、〝ボンド・カフェ〟の一階へ入った。
「おはよう」
 十八歳のウェイトレスに第一声を捧げ、私は、道際のボックスへ腰掛けた。開店直後でほかに客はいなかった。
「元気か?」
「はい」
「そうか」
「御注文は?」
「いつものスープと、ロールパンと、サラダ。それとコーヒーだ」
「分かりました」
 その女の子はいつ見ても感じが良かった。一週間前には二人で映画を観た。〝ワンス・アポン・ア・タイム・アメリカ〟映画から受けた影響は、十八歳の女の子を、そのあとホテルへ誘う気を起こさせないことだった。
 彼女は、コーヒー以外の物を卓上に並べると、トレイを抱き締めて言った。
「この前、とても楽しかったです」
 もちろん、〝映画が〟という意味だろうが。
「おれもだ。いろいろと勉強になったよ」
「また連れてって下さい」
「〝教育映画〟が来ればな」
 女の子はにこりと笑みを浮かべ、店の奥へ引っ込んだ。

 

   軒上泊『べっぴんの町』集英社文庫

 

 この中国人の洋服屋を演じているのが笑福亭鶴瓶で、本当に良い味を出していて、私(主人公)の部屋があるビルの1階に住んでいるため、場面が切り替わるワンクッションで登場し、とても美味しい役どころでもあると思いました。笑福亭鶴瓶が好感の持てる商売人のおじさんという感じで演じていて、これをすかしてかわしつつ邪険にしない恭サマとの掛け合いが面白さを引き出しているのでしょうね。

 上記の原作からの引用シーンですが、映画だとこの様にアレンジされています。

「だあれ、この人?」
(私が声に振り仰ぐと十八歳のウェイトレスがこちらを覗き込んでいた)
中島町子ちゃん、新しい恋人。可愛いだろう?」
(私は笑って写真をちらつかせた)
「ひどい。映画に連れてってくれるって約束忘れてるんじゃないの?」
「忘れてないって。でも、行くんだったらラブストーリー観に行こう」
「アニメのどこがいけないの?」
(ウェイトレスはにっこり笑って、空になったトレイを抱えて奥に戻った)
(私は相方のいないテラス席でコーピーカップを持ち上げる)
「4本も続けて観れないよ」

 

   映画『べっぴんの町』
    ※()内は筆者による補記。

    私:柴田恭兵。ウェイトレス:守谷佳央理守谷香

 

 この「4本も続けて観れないよ」がチャーミングで良いんです。

 かつて、渡哲也は舘ひろしに対して「お前には華がある」と評したそうですが、柴田恭兵には独特の色気がありますね。この辺りが『あぶない刑事』でのダンディとセクシーに繋がっているのかもと思いもしました。

 89年の映画なので、音響効果がいまからすると特に殴打するときの音がいかにも「作った」感じが強いのですが、それゆえにマッチを擦る音や瓶を置く音、足音や衣擦れの音といったあまり目だ立たない効果音が相対的に自然に聞こえるため、もしかしたらこの時代はわざとそうしていたのかな、とも思いました。

 音楽に関してはメインテーマが1曲あり、これのアレンジバージョンを複数使うやりかたが採用されており、物語の内容がシンプルなのでこのイメージを全体に通底させるBGMとして機能していました。
 主人公に着目していれば、物語が読めてくる作りになっており、その分背景説どころか伏線さえも省略されているため、「どうしてそうなったのか」が少しわかりにくい部分もありましたが、全体としては楽しめました。ただ、この辺りは原作を先に読んでいたことも関係あると思います。

 80年代なので車が面白いです。
 “私”の愛車はMG・MGBという渋い(かつエンスーな)チョイスなのですが、中盤でのカーチェイス相手がホンダ・プレリュード(2代目)だったり、トヨタソアラセリカXX(2代目)が並んで信号待ちしていたり、日産・シルビア(S12)が何気なく停車していたり、といまの車よりもこの時代の車の方に親しみを感じる自分には、そういう点でも美味しい映画でした。

 本木雅弘はヤクザの若頭という役どころなのですが、原作から踏襲した見た目や物腰だけだと好青年に見えてしまう感じがよく出てましたね。これは配役の勝利だと思います。

 つまり、役者について何も知らなくても、皆役にはまっているのでいま観ても面白いと思います。
 日常生活からは余裕を感じるのに同時に虚しさに近い倦怠感が漂う雰囲気は、バブル景気の光陰をほどよいバランスで描いているとも思いました(まあ、この後に間もなく崩壊するのですが)。

 

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霜月りつ『本屋のワラシさま』ハヤカワ文庫

 

本屋のワラシさま (ハヤカワ文庫JA)

本屋のワラシさま (ハヤカワ文庫JA)

 

「────その本はまだ置いておくとよいぞ」
 子供の声がした。はっとして声のしたほうに目をやって、
「うわあっ!」
 思わず叫んだ。レジ台の上に、今さっき片付けた筈の人形が座っていたからだ。
「失礼なやつだな。おれのような愛らしい童女を見て、うわあ、とは」
 人形は座ったまま赤い唇を開いた。いや、人形ではない。人形に衣装や髪型がそっくりの女の子だ。
「な、な、な、き、……だ、」
「なんだきみはだれだ、と言いたいのか?」
 少女は首を傾げる。真っ黒な髪がサラリと肩の上を滑った。啓はあごをコクコク引いてうなずいた。
「おれはワラシ。この水谷書店の座敷童ぞ。大切にするがよい」

 

   霜月りつ『本屋のワラシさま』ハヤカワ文庫 

 

 怪奇不思議や妖怪変化と古書店の組み合わせは数多くありますが、これは個人経営の書店に居着く座敷童と元大型書店の店員のお話しです。

 主人公の啓は以前の職場でのトラブルから、対人恐怖症を煩い本を読むことができなくなってしまった経験を持つ青年です。どちらも完治とは行かないまでも回復してきたため、入院した伯父に店主代理として一時的に店を任されることになります。ひとまず、過去の経験を頼りに──つまりは大型書店の価値基準でもって──棚整理を始めようとしたところ、レジ台の上に置いてあった人形が突然動き出ししゃべり出し……というのが引用した部分です。

 しかも、店主にしか見る(動いている姿を感知する)ことができないので、臨時とは言え店主代理となった啓はいきなり見えてしまい戸惑うばかり、というわけです。

 江戸時代の貸本屋の時分から守り神として、本屋に居着く座敷童。物言いは率直で、態度は傲岸不遜。暇があれば本を読んでいる。まあ、私なら惚れますな。

 1話完結型の短編を繋いでいって長編の体を成すかたちで、区切りよく読めてかつ全体の時間が進んでいきます。なんとなく続きが出そうな雰囲気がある本ですが、この1巻で完結します。

 実際、このフォーマットで何話も書けそうな気がしたのですが、この1冊で啓の抱えていた問題が解決するので(解決しないと話にならない)、ここでばしっと締めたのは潔いと思いました。物語としても美しい終わり方です。ぐっじょぶ!

 私のお気に入りは「三冊目 ローダンを待ちながら」ですね。本に対する思い入れを抱く人間の心境をわかっているなぁと思いますし、実はこのエピソードだけ話の大筋にワラシが干渉しないのです。ブックアドバイザーとしての能力は発揮しますが、それもたったひと言の助言のみ。

 その後は、ぜーんぶ人の行動と本との出会いによる偶然によるものです。

 あと、啓とワラシの関係が近しくなってきて、思わず「ふふっ」と笑ってしまうような場面が多々あります。

 啓がどうして今のようになってしまったのかも一つの問題に思われていたことが様々な要素が絡まった末のことだったりして、1冊を通しての大筋も面白いです。

 そうした啓の内面の変化に同調しているのか、元図書課員で本はなるべく書店で手に取って買いたい私としては、一冊目の彼にはイラッとする部分が多々ありました。また、それとは別に一冊目(一話)に関わるエピソードが個人的な経験に拠りすぎていて、ちょっと押し付けがましく感じます。人によっては四冊目(四話)で引っかかる率が高いかもしれません。

 つまり、良くも悪くも読者の感情を揺さぶる本であり、本が好きな人にお勧めできる一冊なのです。

 

 以下は余談なのですが、この本を手に入れるのには結構苦労しました。

 出先で唐突に読みたくなり、「確か刊行した頃にあの書店にあったよな」と立ち寄ってみたら、見事に売り切れ(当たり前だ、馬鹿者め)。この日は池袋を経由するため、まずくまざわ書店(規模は小さいものの応対が丁寧なので愛用している)で探して貰うとやはり売り切れ。

 リブロがなくなってしまったのが本当に痛いですね。

 池袋駅構内には他にも2店舗ほど書店はあるのですが、近年の私が良く読む早川書房東京創元社の本はあんまり置いてないんですよね。客層が違うわけですな。

 結果、合計5つの店舗を回り、旭屋書店の棚で発見しました。

 昔からそうなのですが、旭屋書店は入ると「ああ、書店だ。これこそ書店だ」的な安心感があります。広すぎず狭すぎずほどよい空間の作り方をしている気がします。郊外にはありませんけどー。

 ただ、ちょっと残念だったのは帯の背の部分がちょっと破れていて、新古書店にありそうな佇まいだったので、一応店員さんに確認しました。

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 この時点で「たぶん在庫ないだろうなー、そういう縁なんだろうなー」とは思っていたのですが、ここまで来て確しかめもせずに割り切ってしまうのはダメだろ、という思いから確認して貰いました。

 で、まあ、案の定、他に在庫は無かったわけです。

 忙しい最中に面倒を頼んでしまった店員さんには悪いとは思いましたが、この本にちょっとした思い出ができましたね。これでつまらなかったらどうしよう……という危惧もあったのですが、そうした思いは杞憂に終わりました。おそらくこの本はうちに居着くでしょう。

 というのが、今年の11月のハイライトでした。

 

 では、なぜそうまでして読みたがるような本を確保していなかったのか。
 理由は私の面倒な性分にあります。

 

 刊行時点(2019年5月)で情報は掴んでいたのですが、その時はあまり乗り気ではなかったため、メモだけしておいた「いつか読むつもりの本」のうちの1冊でした。

 そーゆー本が結構あります。なぜその時買っておかないのかというと、入手する所有欲と読書欲が一致しないときに買っても本棚の肥やしになるからです。
 本に限って言えば、この所有欲と読書欲の一致による反応が購買欲の正体だと思っています。食欲と似ています。飢えを感じるところなど。

 書店って難しい商売ですよね。商品は腐りはしないけど、新刊の鮮度が読者の食欲と一致するとは限りませんから。
 一時の話題性や注目を集めることで「その時は売れる本」というのはあるでしょうけど、実際のところ書店にとっての上客はちょくちょく本を買いに来る読書が好きな人間でしょうから。

 で、こういう客は好みが一定しないから、入荷する本をジャンル単位ですら絞れないので面倒くささがあると思います。なぜかというと、私がそうだからです。

 

  なお、今回から電子化されている本は、Kindleのリンクを貼ることにしました。Amazonリンクを使うならそっちの方がいいかな、と思った次第です。