吉田篤弘『流星シネマ』ハルキ文庫

 

 

 ぽつりぽつりと繰り出される小さな語りが静かに連なっていく。小さな語りに語られた物語の断片が時間の経過をおいて——ときに過去を顧みる行為を経て——ひとつの物語を成していく。

 また、語られている物語の舞台は日本なのだけれども、語り部である僕(太郎)の主観がやや曖昧なためか詳細な輪郭がぼやけて見え、どこか知らない国を舞台にしているかのように思えるところがあった。

 そして、この文章を心地良いと感じるときとそうでもないと感じるときがある。明確にトーンが変わるのはアキヤマくんが登場する部分で、それまでとても身軽に感じられた僕に過去という重石がのしかかるからなのかもしれない。

 そうした印象を受けた。

 

 どうにも取り留めがない。

 この本を読んでいるときも前半は集中して読んでいたのだけれど、なかばに差し掛かったところでいったん中断してしまい、少し間を置いてそれなりに集中して読み、読了した。

 なかばまで読んで気がそぞろになってしまったのか、気がそぞろになったからそういう読み方をしてしまったのか……。

 ここ最近のことを思い返すと恐らく後者であろうと思われる。